2020 制振工学研究会 技術交流会 講演プログラム

日  時:2020年12月4日(金)  9:20 ~ 17:45
場  所:Zoom(URLは別途連絡)

 * 一般講演は1件12分講演8分,質疑4分)です.
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9:20 ~ 9:30 < 開会のあいさつ> 岡村 宏(制振工学研究会 会長,芝浦工大)
9:30 〜 10:20 <セッション1> 吸 音 司会:黒沢 良夫(帝京大)
SDT20001均質化法とトポロジー最適化を併用した多孔質材微視構造の設計法○山本 崇史(工学院大,広島大),山川 啓介,桂 大詞,遊川 秀幸(マツダ),大下 浄治(広島大)
吸音材の代表特性である吸音率と等価な散逸エネルギーの最大化を目的に,多孔質吸音材の微視構造のトポロジーを最適化するマルチスケールトポロジー最適設計法を構築する.ここでは,随伴変数法を用いて階層的に適用し,ミクロスケールの設計変数に対するマクロスケールの目的関数の設計感度を求める手法を提案する.
SDT20002均質化法によるアルミ焼結材の微視構造モデリングおよび吸音率の向上検討○島村 凌平(工学院大院),山本 崇史(工学院大)
アルミ焼結材は耐熱性,耐食性が高いため自動車のエンジンルーム内の吸音材として期待されている.アルミ焼結材は背後空気層により吸音特性を変化させることができ,背後空気層が大きいほど吸音率のピークは低い周波数になることが分かっている.しかし,アルミ焼結材の厚さやアルミ粉末の粒径の吸音特性への影響は十分に検討されていない.本研究ではアルミ焼結材の厚さとアルミ粉末の粒径の吸音特性への影響を検討する.
SDT20003確率的均質化法による多孔質吸音材のマルチスケール解析○小松 洋輔(工学院大院),山本 崇史,立野 昌義(工学院大),桂 大詞,山川 啓介,?遊川 秀幸(マツダ)
多孔質吸音材の異なるスケールを介した不確かさの伝播を推定する計算手法に着目し,微視的なランダム変動が巨視的特性である吸音率に及ぼす影響を検討した.ここでは,確率論的解析にはモンテカルロシミュレーションと摂動法を採用し,マルチスケール解析には均質化理論にもとづく有限要素法を採用した.これらにより周波数領域における吸音率の確率分布を計算し,より少ない計算コストで確率分布を近似する方法を提案する.
SDT20004音響管における管壁減衰の境界要素法による影響調査〇佐波 慧也,加藤 大輔(HOWA)
音響管による垂直入射吸音率測定では,誤差が生じる.誤差の要因の一つとして,管壁に生じる減衰が考えられる.ただし,この管壁減衰を要因とした誤差の定量的な検討は見受けられない.そこで,境界要素法により音響管内の管壁に減衰を与えた場合の垂直入射吸音率を解析し,この誤差について調査をした.この結果,低周波数帯で垂直入射吸音率が管壁減衰により高くなることが確認された.
< 休 憩 >
10:30?〜 11:20 <セッション2> 制振・動吸振器 司会:赤坂 修一(東工大)
SDT20005減衰系に取付ける単一質量動吸振器のH∞最適化設計のための計算式〇浅見 敏彦(兵庫県立大)
動吸振器のH∞最適化とは主振動系の共振点の高さを最小に抑えることを目的とし,最も早く提案され,現在でも最も広く採用されている規範である.本講演では,粘性減衰のある主系に取付ける動吸振器の最適設計条件を計算する方程式を提案する.この式は代数的には解けないが,数値的に簡単に解くことができる.コンプライアンス,モビリティ,アクセレランスの各伝達関数に対して,その数値解を表示する.
SDT20006安定度規範に基づくヒステリシス減衰型直列二重動吸振器の最適設計〇浅見 敏彦(兵庫県立大),山田 啓介(関西大)
二つの動吸振器を直列接続すると,単一質量動吸振器に比べて制振性能が大幅に向上する.実用に供されている動吸振器の多くはばねとして高分子材料が使われており,その内部減衰は粘性減衰型ではなく,減衰力が物体間の相対変位に比例して変化するヒステリシス減衰型に近いとされている.本講演は,自由振動を最短時間で収束させることを目的とする安定度規範によってヒステリシス減衰型直列二重動吸振器の最適化を行った.
SDT20007防振性切削バイト○小舞 忠信(TKテクノ)
防振性切削バイトは,切削振動を材料本体は吸収するので,超硬バイト並の切削特性,切削効率を発揮する.更に,工具先端の切削振動を緩和してチップの摩耗低減・チップの寿命延長が期待できる.工具素材は高Mn・高N系ステンレス鋼であり,冷間引抜工程によってHRC:45.5に仕上げる.
SDT20008熱可塑性ポリオレフィンを用いた制振材技術の開発○小助川 陽太,石黒 雄大,中島 友則,竹内 文人(三井化学)
自動車,建築物,電子電気機器等の特定周波数帯における振動低減のために,制振材が使用されるケースがある.弊社では,熱可塑性ポリオレフィン樹脂を用いた制振材技術を開発中である.本発表では,熱可塑性ポリオレフィンの配合設計による粘弾性制御およびその配合を用いた制振材の検討事例について報告する.
< 休 憩 >
11:30 〜 12:20 <セッション3> 衝撃吸収・非線形・音質 司会:山口 誉夫(群馬大)
SDT20009クラシックギター表面板の力木レイアウトの簡素化による音質への影響について〇熊倉 有紀,岸田 雄太郎(工学院大院),大石 久己(工学院大),長谷川 浩志,岡村 宏,(芝浦工大)
クラシックギターの音質は,表面板の裏面に配置された力木のレイアウトによって大きな影響を受ける.そのため,力木のレイアウトは複雑化し,長年蓄積された伝統のノウハウを守るために固定化する傾向がある.それに対して,減衰特性の改善のために力木の本数を減らした新しいレイアウトのギターの製作を試み,工学的アプローチによって,音質の面から評価し,力木の音質への改善を明らかにしたので報告する.
SDT20010伝達特性・放射特性を考慮した高速スイッチング制御による騒音の音質改〇堀 龍平,高橋 政行(工学院大院),大石 久己(工学院大)
データサーバなどの冷却に使われるファンモータは省エネ・低騒音化などを目的にインバータによる回転速度制御を行うことが一般的である.このときインバータに起因する高周波騒音が発生する.本研究では,インバータの加振力特性だけではなく,ファンモータの振動伝達特性や放射特性を考慮した音質改善方法の提案を目指す.
SDT20011クラシックギターの数値モデルの構築(各部材における材料特性の実験的同定)〇岸田 雄太郎,熊倉 有紀(工学院大院),大石 久己(工学院大),長谷川 浩志,岡村 宏(芝浦工大)
クラシックギターには弾き込みにより音質向上が期待できるエイジング効果がある.しかしエイジング効果は明らかにされていない.そこでクラシックギターの構造及び構成要素の明確化を行い,数値モデルを構築し,数値解析によりエイジング効果の解明を目指す.本研究ではクラシックギターの各部を構成する木材のヤング率を実験的に明らかにする.それらを用いて木材の数値モデルを構築,実験と結果を比較し,精度向上を図る.
SDT20012落錘の粘弾性への衝突(3要素粘弾性モデルによる検討)○佐藤 美洋(上智大)
粘弾性材料はしばしば衝撃緩衝材として用いられる.ここでは3要素粘弾性モデルを用いて粘弾性体への落錘の衝突問題の解析を行なった.粘弾性体の緩和時間と履歴曲線,吸収エネルギー,衝撃力等の関係について調査・検討した.
12:20〜13:00 < 昼 休 み >
13:00 〜 13:15 <本研究会 連携事業紹介> 司会:大石 久己 (工学院大)
地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センターの紹介○岩永 敏秀(都産技研開発本部開発第一部光音技術グループ長)
13:15 〜 14:15 <基調講演> 司会:大石 久己 (工学院大)
SDT20013インクルーシブデザインによるライフサポート機器の開発○田中 英一郎(早稲田大学理工学術院 大学院情報生産システム研究科)
開発段階から使用対象者を巻き込んで設計する「インクルーシブデザイン」により,人間の動作を補助するライフサポート機器を開発している.特に,歩行,上肢(腕)作業,起立,持ち上げ動作などを対象とし,使用者の意見を取り入れながら試作し,その補助効果と感想によって何度もフィードバックしながら完成度を高めていく.すでに歩行補助と持ち上げ動作補助を製品化しているが,これら研究室での各種開発機器について紹介する.
< 休 憩 >
14:30?〜 15:30 <セッション4> 減 衰 司会:加藤 大輔(HOWA)
SDT20014災害救助用組み立て式ホイッスルの音量向上検討○黒沢 良夫(帝京大),小野 真(レイトリロジー)
災害時に救助を呼ぶため,携帯に便利な組み立て式のホイッスルを開発した.名刺サイズの平面素材(通常の名刺に用いるケント紙やコート紙)を組み立てて作成する.本内容は既に特許化したが,十分な音量(音圧レベル)が出なかった.救助者に聞こえやすいよう,内部構造や吹き方を工夫して音圧レベルやピーク周波数を改善した結果を報告する.
SDT20015FEMとMSE法を援用したSEA制振応答解析(波動ブラックホ−ルを持つL字パネルの減衰応答への接続角度の影響)〇須田 涼斗,山崎 光介(群馬大院),山口 誉夫(群馬大)
効率的な振動や波動減衰方法としてMironovにより,波動ブラックホールが提案されている. 減衰の連成を考慮したFEMとSEAのハイブリッド振動解析を用いて, 全側面を固定した波動ブラックホールを含む制振パネルと平板をL字結合した構造の振動特性を調べた. 得られた内部損失率, 結合損失率より, 少ない制振材で, L字パネルの結合部の接続角度の違いによらず, 高い減衰効果が得られることがわかった.
SDT20016MSKE法とFEMによるカバープレートに波動ブラックホールを持つ二重壁の減衰応答解析〇久村 裕太,大澤 幸汰,大河原 慎理(群馬大院),山口 誉夫(群馬大)
本研究では,吸音二重壁構造のカバープレートに制振材層付き波動ブラックホールを持つモデルを取り扱う.これをFEMでモデル化し数値解析し,山口らにより提案されたMSKE法を用いて,波動ブラックホールの振動低減特性と振動伝達特性の変化を解析した.
SDT20017T形鋼の端部の構造を波動ブラックホールにした制振構造の減衰挙動のFEM解析〇藤沼 亮一,三俣 孔輝(群馬大院),山口 誉夫(群馬大)
鉄骨の耐震性向上のためなどに用いられるT形鋼の端部の構造を波動ブラックホールとした新しいタイプの波動ブラックホールを提案した. さらに,そのブラックホール部には粘弾性制振材を積層し,FEMでモデル化し固有値解析し,共振周波数,固有モードを求めた.さらにモード歪みエネルギー法で, 共振ピークごとの振動減衰値であるモード損失係数を計算することにより新波動ブラックホールの制振特性を調べた.
SDT20018講演取り下げ
< 休 憩 >
15:40?〜 16:30 <セッション5> 遮 音 司会:小白井 敏明(音響環境技術研究所)
SDT20019積層および圧縮された防音部材の遮音解析○村瀬 真央,石黒 雄大,中島 友則,竹内 文人(三井化学)
自動車などで使用される防音部材は,積層および圧縮形状をとることが多い.しかし,圧縮された防音部材の音響性能予測に必要となる,各材料の圧縮時の Biotパラメータの測定は,非常に困難である.そこで本発表では,音響材料特性予測ソフトウェアを用いた圧縮時の Biot パラメータ推定,ならびに,遮音性の予測を行い,垂直入射透過損失の実測値と比較検討した結果を報告する.
SDT20020車載スピーカーにおける自動車車室空間の壁の影響○黒沢 良夫,猪瀬 怜(帝京大),笹島 学,渡邉 光春,内田 善照(フォスター電機)
自動車のスピーカーから出た音が壁の影響によりどのように変化するか解析するため,直方体の箱で壁の吸音材の有無の場合について実験と FE モデルによる計算を行った.計算結果はおおよそ実験結果を再現できた.次に,自動車車室空間を模擬した簡易形状の FE モデルを作成し,天井や床やシートの吸音による影響や,吸音材を追加した際の音圧レベルや音圧分布の変化について実車を用いた計測と FE モデルによる解析結果について報告する.
SDT20021多孔質セラミック材の微視構造モデリングおよび微粒子捕集フィルターの音響透過損失予測○秋元 優佑(工学院大院),山本 崇史(工学院大)
近年の自動車市場では環境負荷の小さい車の需要が高まっている.これを受け,自動車に搭載されている微粒子捕集フィルターの音響性能について研究を行う.本研究では,微粒子捕集フィルターの実使用状況を想定した実験,解析を検討している.予備実験として,排気管直径と同径の簡易的な音響管を自作し,実験精度の検証をする.その後,同実験系の計算モデルを作成し,実測値と計算値を比較することで評価手法の妥当性を検証する.
SDT20022周縁支持部に減衰をもつ窓サッシの遮音特性解析(モード減衰,支持剛性のコインシデンス周波数領域における透過損失への影響)〇山口 誉夫(群馬大),山本 耕三(東洋建設),天津 成美(キャテック),大山 宏(日本音響),岩根 康之(飛島建設),大石 力(環境調査設計)
利用技術分科会建築(住宅)における制振材料利用技術WGでは,窓サッシの周縁支持構造の減衰特性が遮音性能へ与える影響を調べている.周縁の粘弾性支持材の材料減衰を変化させている. モード歪みエネルギー法を援用して音響透過損失を計算し,コインシデンス周波数領域における透過損失の複雑な変化とモード減衰,周縁部の支持剛性の関係を考察した.
< 休 憩 >
16:40?〜 17:30 <セッション6> メタマテリアル 司会:塩瀬 隆範(住友ゴム)
SDT20023ハニカム構造の音響メタマテリアルの遮音解析○黒沢 良夫,木村 健人(帝京大),福井 一貴,原山 和也(寿屋フロンテ)
ポリプロピレン(PP)をハニカム構造に加工したものの上下にフィルムを貼った音響メタマテリアルを用いて,音響管や残響室法による透過損失の計測で用いた 300mm×300mm の FE モデルを作成し,吸音率・音響透過損失の数値計算や実験結果との比較を行い,メカニズムについて分かったことを説明する.また,種々のパラメータスタディを行い,音響透過損失に関する影響について紹介する
SDT20024ヘルムホルツレゾネータを内包した一重壁音響メタマテリアルの音響透過損失の実験的評価○荒川 拓宣(工学院大院),山本 崇史(工学院大)
自動車内の静粛性向上のため,ウィンドウの遮音性の向上が求められているが,自動車ウィンドウの設計は多くの制約がある.そこで,音響メタマテリアルと呼ばれる構造体に着目し,ウィンドウを想定したアクリル平板にヘルムホルツレゾネータを周期的に内包した音響メタマテリアルを提案した.本研究では,提案した音響メタマテリアルを作成,小型の遮音試験装置により音響透過損失を算出し,数値計算と比較して有効性を検証した.
SDT20025レゾネータとメンブレンを用いた音響メタマテリアルによる二重壁防音構造の実験的評価○織田 高穂(工学院大院),山本 崇史(工学院大)
自動車の電動化により,ロードノイズなどの低中周波数騒音が相対的に目立つ問題がある.低中周波数域騒音を抑制するために,音響メタマテリアルが注目されている.音響メタマテリアルは音波長以下の周期構造内に共振系を有している.音響メタマテリアルを自動車の遮音材に適用することで,低中周波数域における遮音性能の向上が期待できる.本研究では音響メタマテリアルによる二重壁防音構造の実験的評価手法について検討をする.
SDT20026底面を薄膜化したレゾネータを用いた二重壁音響メタマテリアルの寸法最適化○小高 良介(工学院大院),山本 崇史(工学院大)
近年普及しているHV,EVにおいて,ロードノイズや風切り音など低中周波数の騒音が車内の静粛性に悪影響を与えている.また,既存の遮音材では低中周波数の騒音は遮音することが難しい.そこで本研究では音響メタマテリアルに着目し,ヘルムホルツレゾネータと薄膜を用いた音響メタマテリアルの機能周波数の拡張を検討した.音響透過損失を理論式から算出し検討を進め,遺伝的アルゴリズムを用いたパラメータ探索を行った.

17:35 ~ 17:45 < 閉会のあいさつ>  井上 茂(制振工学研究会 副会長,エヌ・ブイ・テック

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