2023年を迎えて(会長挨拶)

                     制振工学研究会会長 岡村 宏

 明けましておめでとうございます.本年もよろしくお願いいたします.

 昨年後半から,新型ウイルスに対する世界の考え方や対処法が大きく変わりました.かなりリスクはあるが人間らしい本来の生活や経済状況を取り戻したいとの考えが主流となりました.サッカーのワールドカップの大会では,スポーツが新型ウイルスをはねのけたような勢いでした.しかし,日本は,世界で唯一?まじめに感染者数をカウントしていると,8 次の感染ピークが年末に明らかになり,どのように対処するかが問われています.リスクを極端に嫌う日本人気質でも,日常生活や経済を取り戻す考えが次第に強くなってきました.
 これと連動しているわけではありませんが,ウクライナでの戦争,エネルギー,穀物等の需給課題等の現象を目のあたりにして,平和憲法を固持し戦争に巻き込まれるリスクはダメだ,原子力発電はあまりにもリスクが大きい等の考えが,変化し始めています.
 更に,日本の産業力について考えると,この十年間で,日本の大型企業の業績は横ばいかやや下がる傾向にあり,それに連動して日本での賃金も抑制され,円安が加速し,世界基準での付加価値が相対的に大幅に低下しています.その原因と考えられることは,日本の大企業は,今まで通りのやり方で堅実にやっていればよい,あえてリスクをとることはやらないという企業姿勢でしょう.
 その間,GAFA を代表とする欧米の企業の多くは,この10 年の間に数~数十倍の業績を上げています.中国もそれ以上の成長を続けています.本は,過去に稼いだ貯金が目減りしています.新型コロナは,日本にとっては,ある意味で神風なようなものとみることができます.欧米も中国も新型コロナで産業力発展が減速して,更にウクライナ問題で更に影響を受けています.ここで顕在化した色々な現象を日本はしっかりと認識し,従来路線からシフトアップする実行力をとりもどす必要があると考えます.

 おかげさまで,制振工学研究会も35 回の技術交流会を昨年末に開催することができ,今までの最高人数の参加をいただきました.多くの発表論文や活発な議論をいただき,盛況であったと考えます.
この交流会を支えた裏方のメンバーの方々や参加者に深く御礼申し上げます.遅ればせながら,交流会のアンケートをお願いしています.ぜひご意見をお寄せください.
 しかし,長年の課題である若い技術者の会員数とそのアクティビティは必ずしも伸びていません.
上述のように,同じ路線を進むのではなく,制振工学も,狭義のダンピング技術からより広義な制振工学へと,更にそのすそ野に広がる振動・音響等の動的現象から,それらの影響を受けるより広い分野と連携した視野を持って,活動してゆきたいと考えます.この研究会の活動が,若い技術者に魅力があるものにしてゆく必要があります.よろしくお願いいたします.
 本研究会のweb サイトは,関係者のご努力でこの一年,その基本構造から変え,より使いやすく,見やすくしていただきました.研究会内外との交流や連携の活動にぜひ役立てていただきたいと考えます.


 本年度も,会員皆様のご協力をお願いいたします.

2022年を迎えて(会長挨拶)

        制振工学研究会会長 岡村 宏

 明けましておめでとうございます.本年もよろしくお願いいたします.昨年は新型ウイルスが日本では抑制されて落着きを取り戻しつつありますが、世界中では、新しい変異株ウイルスでの流行が年末にかけ大きくなり、いずれ日本もそのようになる可能性は高く、慎重になってはいるところと考えます。

 これを克服するのはやはり、ワクチンの供給や治療薬の新規開発ですが、残念ながら、ワクチンや治療薬の開発に関して日本は世界のトップクラスの国々から大きく引き離されています。薬剤関係の旧態保持の仕組みや少しでもリスクのある事を避ける社会体質、チャレンジ体制の組めない開発構造等が目立っています。アフターコロナでは、各国とも新型コロナに社会のダメージを受け、いかに立ち直るかが問われます。この経験を生かす国と生かさない国では大きな差が出るものと考えます。日本は、今までも、今も? 後者のままであり、自分たちの能力やポテンシャルを生かすことができていません。現在の若者は、自分のテリトリーはそれなりにしっかりやりますが、そこから離れると、手を出さない、わからない、関心がない傾向があります。全体の枠組みができていれば、効率よく、そつなく機能しますが、トータルのビジョンが魅力的でないと、良い結果を出すことは難しいでしょう。極端な事例では、入出国関連で、何とかしないと生命にかかわることでも、法律通りの処理をすれば容認されるとして、生命に対して、まったくの無関心が居座る場合もあります。一方、試薬のモニターのような領域では、法律自身が生命のリスクを回避するように決まっていますので、リスクはダメに大ブレします。

 扱う対象を広く、総合的に見ることができないと、既存の法律や知見等に縛られて,良い結果を得ることができない可能性が大きくなると考えます。同様に、振動騒音問題では、従来のセオリや知見だけに基づいて対応していては、同じく良い結果は得られません。制振関連の分野は、根無し草のようで、それ自身が直接結果を出す訳ではありませんが、振動騒音分野での全体を見渡す力がないと、太刀打ちができません。さらに、振動騒音分野も実際のモノづくりでは根無し草のようなものです。振動騒音の専門家がだいぶ減ってしまっているように感じますが、特に若い技術者に、制振分野の活動をしていただくことで、より広い視野を養っていただければと考えます。制振工学研究会には、このような役割もあると考えますし、その活動の中に活用していただけるものをたくさん持っています。このような面でも、その役割を微力ながらでも、果たしていく研究会でありたいと考えます。

 本年もウィズコロナとしての対応が続くと考えますが,昨年に引き続きよろしくお願いいたします.研究会のwebページは、それに携わった会員の方々の努力で、見違えるように使いやすく、わかりやすくなっています。会員間や研究会外部からとの交流に役立つものと考えます。

 最後に,改めて,本年もよろしくお願いいたします.